性感染症とは

性感染症相談イメージ

性的接触(性交やオーラルセックスなど)を介して感染していく疾患の総称を性感染症(STD:Sexually Transmitted Diseases)と言います。種類は様々あり、症状としては、おりものの量の増加、性器のかゆみ、性器の臭いが異常、外陰部に痛みが現れることもありますが、自覚症状が全く出ない性感染症もあります。性感染症が疑われる場合はまず検査を行います。その結果、陽性と診断されても多くの場合は適切に処方された薬で治療が可能です。

代表的な性感染症

クラミジア感染症

性行為での粘膜同士の接触によって感染します。病原体はクラミジアトラコマティスで、潜伏期間は1~3週間です。男性の場合は排尿時痛や尿道掻痒感が生じますが、女性では症状が軽く、無症状なこともあるため病気に気づかず若者を中心に感染が拡大しています。
性器からの分泌物や尿、口腔内からの抗原検出や核酸検査(PCR)で診断し、抗菌薬で治療します。放置すると子宮内や卵管の炎症、腹腔内の癒着を引き起こし、不妊、流産・死産の原因になることがあります。

梅毒

梅毒トレポネーマが病原体で、性行為による皮膚・粘膜病変部との接触により感染します。潜伏期間は、3週間程度です。最初のうちは、感染部位(性器、口など)に赤い色の硬いしこりやただれができ、近くのリンパ節が腫れます(第1期)。その後、3~12週間くらいの間に、発熱、全身倦怠感などの全身症状と共に皮膚に様々なタイプの発疹が現れ(第2期)、さらに10~30年の間に心臓や血管、脳が冒されます(第3・4期)。現在は第3期から先に病状が進むことはごく稀ですが、HIV感染症を併発している場合は病状の進行が早まります。
病変部の病原体を顕微鏡で確認するか、血液による抗体検査で診断します。治療は、主にペニシリン系の抗菌薬を使います。何もせず放置していると、病状が第1期から2期、3・4期へと進行していきます。梅毒は、精神異常をきたしたり死に至ることもあるほか、母体の感染により出生児が「先天梅毒」になることもあります。近年感染者が増加傾向にあり注意が必要です。症状などから、心当たりがある場合は速やかに受診するようにしてください。

淋病

性行為による粘膜接触で感染します。淋菌が病原体で潜伏期間は2~7日です。感染すると、おりものや不正出血が見られることもありますが、人によっては症状が軽く、気づかないことも少なくありません。性器、尿道からの分泌物や口腔などからの病原体分離培養、または核酸検査(PCR)で診断をつけます。
治療は主に抗菌薬を用いますが、近年各種抗菌薬に対して耐性が強くなっている傾向が見られます。放置すると不妊の原因になる可能性もあるほか、感染した母体から出産した新生児が「淋菌性結膜炎」になることもあります。

性器ヘルペス感染症

性行為による皮膚・粘膜病変部との接触によって感染します。病原体はヘルペスウイルスで、潜伏期間は2~10日です。発症すると、性器にかゆみが現れ、その後に水泡、びらんが生じるようになります。診断は、視診や病変部からのウイルス分離、抗原検出や核酸検査(PCR)で行います。
治療は、抗ヘルペスウイルス薬を用いるほか、痛みが強い場合は鎮静剤を使用します。ただ、一度治癒したとしても体内にウイルスは潜伏したままなので、免疫力が落ちていたりした時に再発を繰り返すこともあります。

尖形コンジローマ

尖圭コンジローマでは、いぼのような出来物が性器に発生します。ヒトパピローマウイルスが病原体であり、性的接触による皮膚・粘膜との接触で感染します。潜伏期間は3週間~8ヵ月(平均約3ヵ月)です。症状としては、先が尖っているニワトリのトサカに似た腫瘤が、腟入口部や大・小陰唇、会陰、肛門などに発生します。痛みが伴うことはなく、かゆみや軽い異物感を覚えるくらいです。
治療については、塗り薬もありますが、液体窒素による凍結療法、電気メスや炭酸ガスレーザーなどによる切除など、できる限り腫瘤を取り除くようにします。

HIV

HIVウイルスに感染することで発症します。このHIVはヒトの体に本来備わっている免疫力を低下させる特徴があります。数年~十数年の潜伏期間を経た後、弱い病原体にも感染するようになり、様々な病気を発症するようになります。このような状態になることをエイズと言い、生命に影響を及ぼすようになります。
HIVウイルスは、性的接触でHIVを含んだ性分泌液(精液、膣分泌液)が、体の粘膜(口腔粘膜、直腸粘膜など)から吸収されることで感染します。なお、性的接触による感染以外にも、血液感染、母子感染があります。感染するとその直後は、風邪(インフルエンザ)やウイルス感染に似た症状が現れることがあります。
多くの場合、血液検査で診断をつけ、陰性であればHIV感染症の可能性はありません。陽性の場合は治療の必要がありますが、現在HIVウイルスを体内から完全に消し去ることはできません。しかし、薬物療法によりHIV増殖の抑制、免疫力の維持といった、改善がみられるようになりました。