妊婦健診をお受けになる皆様へ

産科外来(妊婦診断・妊婦健診)イメージ

ご懐妊おめでとうございます。新たな生命を宿したことの大いなる喜びと、来るべき出産・育児に対する わずかな不安を交錯させながら日々お過ごしのことと思います。
妊娠・分娩は太古の昔から繰り返されてきた神秘的かつ生理的な現象で、人には自力で出産し、子孫を継代するべき能力が備わっています。しかし、一見正常に見えた分娩経過に突然異常を来たし、母児の生命を脅かすことがある事もまた事実です。

当院では起こりうる危険に備え下記スケジュールで健診・検査を予定し、万が一の場合は異常の早期発見・治療を目指しています。

妊婦健診スケジュール

初診から妊娠24週 ……4週毎健診
妊娠24~36週 ……2週毎健診
妊娠36~40週 ……1週毎健診
妊娠40週以降 ……週2回健診

定期妊婦健診では、毎回体重測定・尿検査・血圧測定を行います。
妊娠34週からは分娩予約先での妊婦健診となります。

妊娠中の検査について

初診時 妊娠の判定は、尿のホルモン検査で行います。着床部位、異常の有無、分娩予定日の確認などのため超音波検査を行います。妊娠はがん検診を受ける絶好の機会であり、全く無症状の方でもこの機会に早期発見されることがあります。 是非この機会に子宮がん検診を受けられることをお勧めします。
妊娠初期検査
(8~12週)
血液型・貧血・生化学・梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV・風疹・トキソプラズマ・クラミジア
このうち、梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV・風疹・トキソプラズマ・クラミジアの検査目的は、もし母体が陽性の場合、妊娠・分娩中の母児感染を防ぐ対策を講じる必要があるためです。HIVはエイズ発症に関与するウイルスで妊娠中には症状の増悪・胎児への感染などの可能性があるため適切な対応が必要です。
妊娠後期検査
(25~32週)
貧血・生化学・不規則抗体・血糖・HTLV-1
おなかも大きくなり、生理的貧血や、腎機能・肝機能など非妊娠時に比べて母体の変化が強くなる頃です。異常があれば適切な対応が必要です。母体の血液中に胎児の赤血球を壊す物質ができることがあり、これを不規則抗体として検査します。不規則抗体が陽性の場合、胎児・新生児に重症の貧血や黄疸がでることがありますので注意が必要です。
HTLV-1は、成人T細胞性白血病の発症に関与するウイルスで、日本には約100万人の抗体陽性者がいますが、発症の確率は0.05%程度とされています。このウイルスは母乳を介して移ることが知られているため、母体が陽性の場合哺乳方法を考えることで新生児への感染率を低くすることができます。
膣分泌物検査
(34~36週 )
産道となる膣内に、新生児に悪影響を与えるような細菌がいないかを検査します。特にGBS(B群溶血性連鎖球菌)は、妊婦の約10%が陽性とされており、母体に症状を現すことはほとんどありませんが、産道感染した場合は新生児期の重症感染症を引き起こすことがあり、治療が必要です。GBS陽性妊婦さんは、分娩時に抗生物質を点滴し、産道感染の確率を少なくすると共に新生児の検査を予定します。
10回胎動表
(34週頃から)
胎動はお母さん自身がもっともよくわかる胎児の元気信号です。毎日落ち着いた時に赤ちゃんが10回動くのにかかる時間を計ってみましょう。
NST 胎児心拍数と子宮収縮を連続的に記録する検査です。30~40分かかりますが、胎児の元気さと陣痛の様子が分かります。予定日を過ぎた方の検診時やその他必要時におこないます。

正常妊娠経過の定期健診や正常分娩に伴う費用は自費となり、保険診療は認められていません。定期健診時に内科(貧血、便秘、痔など)や婦人科(膣炎など)の異常が発見された場合は、保険診療が加算されます。なお、切迫流産・早産など妊娠経過に異常のある場合の診察は、保険診療で対応させていただきます。

妊娠中のスクリーニング検査も自費診療ですが、市町村による公費負担の補助があります。和歌山県在住の方は母子手帳交付時に妊婦健康診査受診票が交付されますので妊婦健診受診時にご利用下さい。 他府県から里帰りの方は、公費受診票が和歌山市でも使用できる自治体と、ご本人が全額自費精算し、後日手続きの上還付される自治体がありますので、あらかじめ地元でご確認下さい。