日本人(特に若い方)は避妊への意識が低いと言われており、避妊の方法も約90%がコンドームの使用とされています。他の避妊法が知られていないことや女性が自ら積極的な避妊を行えていないことがわかります。望まない妊娠や人工妊娠中絶は女性の体と心に深い傷を残す可能性があります。女性が積極的にできる避妊法の普及が望まれます。

低用量ピル

避妊相談(低用量ピル・避妊リング・緊急避妊ピル)イメージ

低用量ピル(low dose OC:Oral Contraceptive)とは、経口避妊薬のことです。日本では1999年より医薬品と認可されました。なお低用量とは、ピルに含まれるホルモンの量が少ないという意味のことで、安全性も高くなっています。この低用量ピルには、卵巣で作られるホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)の2種類のホルモンが合わさったもので、毎日1錠ずつ、同じ時間帯に服用します。 内服することで排卵を抑制するほか、子宮の入り口の粘液の変化により精子が入りにくくなります。もし排卵したとしてもOCを服用していることで子宮内膜が薄くなっているので、受精卵が着床しにくい状態となっています。ピルを正しく服用すれば100%に近い避妊効果があります。

また、避妊以外にも、排卵を抑制することで月経量は減り生理痛も軽くなるため、月経困難症、過多月経、子宮内膜症を治療する目的でOCを選択する場合もあります。黄体ホルモンが増加しないため月経前緊張症にも有効で、さらに不規則な月経周期などに対する治療効果も認められています。さらに、卵巣がんや子宮体がん、大腸がんのリスクを減少させる作用があることでも知られ、女性の生活設計にとっていろいろな理由で有用な選択肢と思われます。服用を中止すると2ヶ月程度で本来の月経周期が回復するため、将来の妊娠に悪影響を及ぼすこともありません。

しかし、副作用が全くないわけではありませんので、安全に服用していただくため問診や定期検査の上、慎重に処方していきます。ご心配な方はお気軽にご相談ください。

避妊リング

避妊リングとは子宮腔内に留置する避妊器具(子宮内避妊具:IUD)のことで、医師により一度挿入すれば、しばらくは何もする必要がないことから、手間のかからない避妊法として知られています。ピルと同様の高い効果を発揮しますが、子宮が大きくてIUDがずれたり、抜けかかったり、長期間挿入したまま粘膜下に埋没していたりすると、避妊効果は低下します。

FD-1は子宮内の環境を変えることで受精卵の着床を妨げるなどの効果により避妊効果が期待できます。2年に一度、入れ替えが推奨されています。ミレーナは緊急避妊薬にも用いられるレボノルゲストレルという女性ホルモンを5年間持続的に放出する避妊リングで、子宮内膜を菲薄化することで受精卵の着床を防ぐとともに、子宮頚管粘液を変化させ子宮内への精子の侵入を低下させることも知られており、高い避妊効果が期待できます(ミレーナは月経困難症、過多月経の治療目的で使用する場合は健康保険で対応できる場合もあります)。
いずれのリングも長期使用することで、位置がずれたり避妊効果が落ちる可能性や子宮自体のダメージとなる可能性もあるため、定期的な検診と適切な時期の入れ替えが望まれます。なお、リングの除去や入れ替えの処置も医師が行う必要があります。

避妊リングが適さない方

  • 妊娠中、または妊娠の可能性がある方
  • 子宮筋腫、子宮奇形など子宮の病気の方
  • 子宮や卵巣の炎症や感染症のある方
  • 過去3ヶ月以内に性感染症になった方
  • 月経以外に原因不明の不正出血のある方
  • リング挿入後腹痛・腰痛を感じる方
  • ミレーナに関してはレボノルゲストレルが合わない方、肝臓疾患のある方

などは使用をお勧めできません。

不妊手術

最も避妊効果の高い方法が不妊手術です。外科的手術を行うことで、妊娠の可能性を0の状態まで近づける施術でもあります。なお不妊手術については、人工妊娠中絶と同じく、母体保護法により適応が定められています。

不妊手術は、男性も女性も行うことができます。男性の場合は、パイプカットと呼ばれるもので、精管の結紮もしくは切断になります。女性であれば、卵管の結紮もしくは切断になります。手術時は、腹部を少し切開します。卵巣から卵子を運ぶ役割のある卵管を切断して糸で縛るといった方法になります。一度行えば、効果は永続します。また、出産の際に帝王切開をされた女性で次回からは妊娠を希望しないという場合に同時に行うこともできます(現在当院では不妊手術は対応できません)。

緊急避妊ピル(アフターピル)について

緊急避妊ピル(アフターピル)イメージ

避妊を行わずセックスした場合、あるいはコンドームが破れるなど避妊に失敗した場合に妊娠の可能性を低くする目的で緊急避妊ピルは有用です。黄体ホルモンを主成分とした薬剤を無防備な性交渉が行われたあとできるだけ速やかに(72時間以内)服用することで、妊娠成立の確率を低くします。世界的には1970年半ばから使用され続けており、安全性は確立されていると思われます。ただし低用量ピルと同様、服用に適さない方もいらっしゃいますので、医師の問診を受けた上での内服をおすすめします。一時的に嘔気や生理前の不快な症状が現れる方もおられますが、重大な副作用は一般的には知られていません。また、服用の効果なく妊娠してしまった場合でも緊急避妊ピルが原因で胎児異常や異常妊娠が起こるという報告はありません。